-この記事は「時には木陰に寝ころんで」より、引っ越ししてきました-

 

イギリス伝統のレモンカード。実は自宅で簡単につくることができる。かわいい瓶に詰めて、ピクニックにも、プレゼントにも。

 

レモンカード

レモンカードとは?

英語で書くと、lemon curd。「凝固する」という意味のcurdが示すとおり、レモンの酸でとろりと固めたクリーム状の食べもののこと。

レモンカードは、とてもシンプルな材料からつくられている。レモン、砂糖、たまご、バターの4つだけ。たったそれだけで、レモンの香りがさわやかな、それでいてまったりとしたバターが濃厚なレモンカードがつくれるなんて、なんだか不思議。

 

 

 

イギリスでは伝統的にレモンカードが食べられているのだけど、なぜ寒いイギリスで、レモンを使った食べものが広まったのだろう。レモンのイメージとしては、なんといってもイタリアのシチリア。映画「ニューシネマパラダイス」のオープニングでも、明るい海と揺れるカーテンのあとに、レモンの籠が映っている。

イギリス貴族のステイタスを表すキュウリのサンドイッチ同様、レモンは豊かさの象徴だったのかも。キュウリはもともとイギリスの気候では栽培しにくい上に、ほとんど栄養もないことから、それでもサンドイッチにキュウリを挟めるということが、裕福な証とされていたのだ。

 

レモンの旬

レモンカードを自分でつくるようになって初めて、レモンにも旬があることを知った。スーパーに行けばいつでも売っているように思うけど、それはアメリカなどから輸入されたレモン。国産のレモンを買おうと思ったら、夏には売っていない。明るい太陽の光が似合うレモン、意外なことに旬は冬なのだ。俳句の世界では、レモンは冬の季語なのだそう。

たしかに、国産レモンの産地として知られる広島をはじめとする瀬戸内海や、和歌山などの太平洋側は冬でも明るく、太陽が元気。シチリアの気候と似ているのだろうか。そういえば瀬戸内海にある小豆島(しょうどしま)は、オリーブの栽培でも有名だ。

 

3回濾してなめらかに

シンプルな材料でつくるレモンカードは、つくり方もシンプル。絞ったレモン果汁と砂糖、たまごを湯煎にかけてクリーム状にとろりとさせて、バターを加えれば完成だ。ただし、私がひとつだけ手間をかけているポイントがある。それは、なめらかにするために濾し器を使うこと。しかも3回。

1回目は、絞ったレモン果汁から種や果肉を濾すために使う。種くらいなら手で取り除けるけど、皮から剥がれた小さな果肉のつぶつぶを取り除くには濾し器が便利。多少のつぶつぶなら省きたくなる行程だけど、濾したあとにはどっさり果肉が詰まっているのだ。これがレモンカードの舌触りに影響すると思うと、やはり濾さずにはいられない。もちろんレモン果汁は清々しいほどにクリアになる。

2回目は、溶きたまごを濾す。なぜ溶いたたまごをさらに濾すのかというと、湯煎したときに白身がつぶつぶとした固形になってしまうから。たまごは火を通すと固まる性質があるのでこれは当然のことなのだけど、濾し器を使うことで回避できる。私は最初にレモン果汁と砂糖を鍋に入れておいて、その上から溶きたまごを、濾し器を通して加えることにしている。

最後は、湯煎が終わった後に濾す。ここまでの工程で、レモンもたまごもすでに濾しているのだけれど、最後にもう一度全体を。万が一、白身が固まってしまっていたりしたときでも、ここで最終的になめらかに仕上げる。濾し器を通して出てきたレモンカードは、すべすべとした絹のドレスのように美しく、なめらか。

レモンの皮を入れて香りをよりよくするレシピもあるけど、私はなめらかなレモンカードが好きなので入れない。とはいえ、せっかくの国産レモンの皮を捨ててしまうのはもったいないので、すった皮を冷凍しておいてパウンドケーキやパスタに使っている。

 

 

おすすめの使い方

丹精込めてつくったレモンカードは、いろいろな使い方で楽しめる。まずはトーストに塗って朝食に。ふんわりした厚切りトーストよりも、薄く切った全粒粉のパンやライ麦パンと相性がいいように思う。イギリス風に、こんがりカリッとトーストしてください。

おやつにするなら、クラッカーやスコーンにたっぷり乗せて。「塗る」のではなく、「乗せる」のがポイント。ピクニックに持っていくのもおすすめ。そのまま食べるだけでなく、手づくりお菓子にアレンジすることもできる。焼いたタルト生地に詰めれば、レモンタルト。メレンゲを乗せて焼き色を付ければ、さらに本格的に。パウンドケーキに練りこんでもいいし、マフィンやカップケーキの中心に仕込んでおいてもおいしい。

たくさんつくった時には、かわいい瓶に詰めてプレゼントに。レモンの旬が冬なので、私はここ数年、お正月のお年賀にたくさんつくっている。おせちやお雑煮が続いてそろそろパンが食べたいな、というタイミングで差し上げると喜ばれる。慣れてしまえば簡単につくれるレモンカードなのに、どういうわけか珍しがられ、褒めてもらえる。

 

レモンカードのつくり方

140mlのWECK瓶3つ分です。

  • レモン 3 つ (レモン果汁85gを絞ります)
  • 砂糖 135 g
  • たまご 3 つ
  • バター 50 g
  1. レモンを絞る。絞ったら、1度濾し器に通して種や搾りかすを取り除く。取り除いたあとのレモン果汁を85g測る。
  2. レモン果汁、砂糖を小さめの鍋に入れる。たまごを溶いて、濾し器を通しながら鍋に加える。
  3. フライパンなどにお湯を張り、鍋を湯煎しながら絶えずゆっくりとかき混ぜる。だいたい20分くらいでとろみがでてきます。
  4. 好みのとろみ加減のところで火から下ろし、濾し器を通してボールに移す。
  5. バターを加えて完全に溶かし、煮沸消毒した瓶に入れて完成!

 

一度にもっとたくさんつくりたいときは、すべての材料を同じ割合で増やして作れる。その場合、湯煎時間は多少変わると思うので調整してください。