-この記事は「時には木陰に寝ころんで」より、引っ越ししてきました-

 

柳を編んだバスケットに、たっぷり詰まったごちそう。

想像しただけで楽しそう!

英国流ピクニックに欠かせないバスケットと、気になるその中身についてのお話。

 

イギリス流ピクニックバスケット

フォートナム&メイソンのピクニックバスケット

ピクニックバスケットの歴史の中で重要な役割を果たしたのが、フォートナム&メイソン。フォートナム&メイソンはイギリスにある創業1707年の老舗百貨店で、日本でも紅茶やジャムなどで知られている。

フォートナム&メイソンのバスケット第1号は1730年代後半、ある裕福なお客さんのために作られたそうだ。その人は、所有している郊外の土地に旅行するとき、あるいは温泉で有名なバースへ遊びに行くときに持っていくバスケットが必要だった。さらには道中の宿で出される食事は粗末なことが多いため、そのバスケットをおいしい食べものでいっぱいにしておくように申し付けたのだ。

そのバスケットの中身は、

ジビエのパイ

焼きたてのパン

酪農が盛んな南西部のバター

フォートナム&メイソンが発祥のスコッチエッグ

チーズ

温室栽培の果物

フルーツケーキ

ミネラルウォーターとビールの小瓶

栓抜き

 

時代を考えると、なんと贅沢なことだろう。

 

イギリスではバスケットのことをハンパーとも言うらしい。そしてハンパーとは同時に、食べものやちょっとした小物を詰めあわせたギフトのことも指す。たとえばクリスマスにはクリスマスプディングやワインを詰めあわせたクリスマス・ハンパー、結婚式の贈りものにはチョコレートやシャンパンのハンパーといった具合。ピクニック用の食器などがセットされている、いわゆるピクニックバスケットのことは、ピクニック・ハンパーと呼んで、ギフトと区別されている。

 

ビートン夫人のピクニックバスケット

ピクニックバスケットの中身について、もうひとつ興味深いお話がある。フォートナム&メイソンのバスケットには、あらかじめ素晴らしいごちそうが入っていたので困ることはない。しかし自分でごちそうを用意するとなると、なにを持っていったらいいだろうか。

実は英国流ピクニックの理想形として、この問いにはひとつの答えが存在する。それは1861年にイギリスで出版された、「ビートン夫人の家政読本」。

ビートン夫人というのはヴィクトリア朝時代の女性。彼女の著書である「ビートン夫人の家政読本」は、なんと出版から150年以上経った今でも販売されている。お料理のレシピや部屋をきれいに保つコツ、子育ての秘訣や家計のやりくりなど、現代の女性誌さながらの内容で、当時から現代まで、主婦のバイブル的な存在らしい。この本の中に「ピクニックバスケットに忘れずに入れるもの」という項目があり、ヴィクトリア朝時代のピクニックの王道を垣間見ることができる。

たとえばメインの食事には

ローストビーフ

ローストチキン

骨付きラム

鳩のパイ

ロブスター

 

甘いものは

瓶詰めにしたフルーツコンポート

ペストリー

ブラマンジェ

プラムプディング

ビスケット缶

各種ケーキ

他にもパン、チーズ、フルーツ、さらにはドレッシング、マスタード、塩、こしょう、砂糖などがラインナップされている。飲み物はエールビール、シャンパン、軽めのワイン、ブランデー、シェリー、レモネード、そして紅茶。コーヒーは淹れるのが難しいのでピクニックに向いていないと書かれているあたり、いかにもイギリスらしくておもしろい。

 

ピクニックバスケットいろいろ

私が持っているピクニックバスケットは、籐を編んで作られている。色はナチュラル、蓋を留めているレザーも明るいブラウンだ。蓋を開けると、裏側にプレートを固定するベルトが付いているのだけど、プレート自体は付属していない。

何年も前に買ったものなので、そろそろ新しいバスケットが欲しい。狙っているのは、英国製の本格的なピクニックセット。柳でできていて、少なくともプレート、ワイングラス、カトラリーがセットになっているものが理想だ。私が持っているバスケットのように食器を留めるためのベルトだけしか付いていないものは、手持ちの食器がちょうどよくセットできない場合がある。大きさ、形、厚みなど、結局はジャストサイズのものを市販品で探すというのはかなり大変だ。

食器だけでなく、その食器をしまうケースが付いているものもある。食器をケースにしまって、さらにそれをバスケットにしまうのだ。なんだかまどろっこしくて、いかにもイギリスらしいと思う。ほかにもブランケットやナフキンが付いているもの、飲み物を入れるためのボトルが付いているものもある。

変わったところでは、ピクニックでワインを楽しむためのバスケットというのがある。ワインボトルがちょうど入る長さで、ボトルを固定するためのベルトが付いている。さらにワインと一緒に食べるための、チーズナイフとカッティングボードもセットになっている。