-この記事は「時には木陰に寝ころんで」より、引っ越ししてきました-

 

ピクニックで熱い紅茶を飲むために、イギリスでは昔からいろいろな工夫がされてきたようだ。寒い季節のピクニックで温かいドリンクを楽しむにはどうしたらいいだろう。

 

ピクニックで熱い紅茶を飲むには

家で作って持っていく

まずはじめに思いつくのが、あらかじめ家で用意して持っていくという方法。例えば紅茶なら、沸騰したお湯で紅茶を淹れ、それを水筒などに入れて持っていく。

思い返してみると、子どものころ家族でピクニックに行くときには、温かいミルクティーが入った水筒を母が用意してくれた。今でも覚えているその水筒は、赤いタータンチェックのレトロな水筒。ピクニックに着くころにはちょっと冷めて、子どもが飲むにはちょうどいい温度になっていた。

今なら性能のいい、真空断熱なんていうすごい水筒があるから、ピクニックでも熱い紅茶が楽しめる。私が子どもの頃はまだしも、ピクニックが流行したヴィクトリア時代のイギリスでは、そのような技術はない。ストーンウェアや金属のボトルに入れた紅茶は、すぐに冷めてしまったのだと思う。

 

外でお湯を沸かして紅茶を淹れる

イギリスで考えられたのが、ピクニックに着いてからお湯を沸かして紅茶を淹れるという方法。ヴィクトリア時代のピクニックは、上流階級から中流階級の豊かな人びとが楽しむ娯楽だったから、身の回りのお世話をしてくれる召使いがいつも一緒だった。芝生に広げたブランケットでのんびりとシャンパンでも飲んでいるうちに、彼らがせっせとお湯を沸かしてくれたのだろう。これでできたての紅茶が楽しめるというわけ。

しかし残念ながら現代の私たちの多くは、そのような召使いを連れていない。自分でお湯を沸かさなければいけないのだ。それも野外で。のんびりごろごろするべきピクニックで、必死に火をおこしたくはない。

一度、ピクニックでお湯を沸かす試みに、小型ガスバーナーを使ったことがある。薪から火をおこすよりも労力は格段に少なく、カセットコンロほど仰々しくない。きちんと沸騰したお湯ができ、おいしい紅茶を飲むことができた。しかし公園などでは火器の使用が禁止されていることが多いうえ、明るい昼間には炎が見えにくいので、子どもと一緒のピクニックでは危なくて現実的ではないかな。

 

熱湯と茶葉を持っていく

第3の方法が、熱湯と茶葉を持っていって、ピクニックに着いてから紅茶を淹れるという方法。一見すると、1つめの方法とあまり変わらないように思える。たしかに液体の温度が下がってしまうことには変わりない。しかし紅茶は淹れてからしばらくすると酸化してしまうので、持ち歩いているあいだに味が落ちることを考えると、たとえ沸騰したてのお湯でなくても、その場で淹れた紅茶のほうがよりおいしく感じられるのかも。まして真空断熱の水筒がある現代なら、ほとんど熱湯の状態で紅茶を淹れることができる。

お湯の状態で持っていくといいことが、もうひとつある。お湯を持っていけば、紅茶だけでなくコーヒーも、緑茶も、ハーブティーも楽しめるのだ。我が家みたいに紅茶派とコーヒー派がいる場合は都合がよい。

さっき外から帰ってくる途中、今シーズンはじめて「寒い!」と感じた。いつの間にか、季節は秋。キンモクセイがよく香っている。ピクニックでも温かいドリンクが欲しくなる季節がやってきた。