もっとも有意義な休日の過ごし方のひとつ、ピクニック。一体いつから人びとはピクニックを楽しむようになったのだろう。

 

ピクニックの歴史

発祥はフランス

ピクニックはイギリスの文化だと思っていたけど、意外なことに実はフランスが起源なのだとか。ピクニックという言葉はフランス語の「pique-nique」から来ているそうで、1692年の「Origines de la Langue Française」という本に、ピクニックについての最古の記述が残っている。1692年のフランスは、太陽王と呼ばれたルイ14世の時代。あの煌びやかなヴェルサイユ宮殿が建設されたのもこの時代だ。贅を尽くした調度品や、地形を変えるほどの大がかりな庭など、ゴージャスな宮廷文化が想像できる。

このpique-niqueというフランス語は、「レストランにワインを持ちこんで飲む人々のグループ」という意味があるそう。転じてピクニックという言葉には、「みんなで何かしら持ち寄ってする食事」という意味が含まれているのだ。

 

イギリスに伝わる

ピクニックがイギリスに伝わったのは18世紀半ばのこと。1748年に送られた手紙に、初めて英語で登場する。その手紙によると、カードゲームやアルコール、歓談を楽しむ場としてのピクニックが紹介されているそうだ。

実はピクニックが伝わる以前の中世から、ハンティングを嗜む貴族の間では、外で食事を楽しむ習慣があった。貴族たちのことだから、簡易的な食事ではなく料理人を同行させ、テーブルをきちんとセッティングして召使いにサーブさせるような豪華な食事だ。そのようなシーンは数々の絵画にも描かれているとおり。そうした背景から、ピクニックはハンティングととても深く関わっている。

 

ピクニック大流行

19世紀初頭、ロンドン社交界の花形メンバーによって「ピクニックソサエティ」が設立された。ゲストをもてなす役割の人物はなく、参加者みんなが飲み物を持ち寄り、楽しい時間を分かちあうためのサークルだったそうだ。その結果、上流階級の人々のあいだでは、郊外の邸宅にゲストを招くピクニックが流行した。

その後の産業革命によって豊かになる人々が増えた一方で、人口が一気に増えて生活環境が悪くなったロンドン。そんな大都会を抜け出し、自然の残る郊外で過ごす一日は、どれほど晴れやかな気分だったことだろう。忙しい現代を生きる私たちにも大いに共感できる感覚だ。

 

ピクニックをより気軽に

20世紀に入ると自動車が普及し、貴族だけでなく市民も気軽に遠出ができるようになった。かつて貴族が狩りを楽しんだ土地は公園として一般に開かれ、今ではたくさんの人がピクニックを楽しんでいる。

クラシックなピクニックセットで貴族のようなピクニックをするもよし、はたまたプラスティックトレイとテイクアウトフードで手軽なピクニックをするもよし。その時々に合わせてスタイルを選べる現代は、工夫次第でいろいろなピクニックが楽しめる時代と言えるのかも。