月日が経つのはあっという間で、今年ももう折り返しですね。昨年の今頃は早々に羽毛布団を片付けてしまって、震えながらタオルケットにくるまっていました。今年はその教訓からずっと羽毛布団で頑張っていましたが、いよいよ暑くて昨日から薄かけに。結果、快適!去年の同じ時期より暑いのかな?それでも窓は閉めているし明け方ちょっと肌寒いので、東京の暑さとは比べるべくもありません。

 

金宇館

先日、松本市は里山辺にある金宇館(かなうかん)というお宿に行ってきました。若いご夫婦がきっちりと仕切っていらっしゃるとても居心地のいい場所で、いま思い出しながら写真を見返したりしているうちにまた行きたくなっております。ブログを読んでくださる皆さんにお勧めしたいというのはもちろんあるのですが、このお宿を応援したいという気持ちから、紹介させていただきます。

 

信州に移住して2年が経とうとしていますが、私たち家族は現在家を借りて住んでいます。信州暮らしが気に入るようだったら、それから家を建てて根を下ろそうという考えで移住してきました。そのあたりの経緯はこちらの記事に書いていますのでよかったら。移住してみたら信州の暮らしはとても快適、なんならこのあたりに郷土愛みたいなものまで芽生えてきてしまったので、根を下ろす準備として、土地探しや建築家探しを続けています。

そんな中でいいなと思って情報を追っていた建築家さんが、この金宇館のリノベーションを手掛けられたということがわかりました。もし将来設計をお願いするなら一度見てみたいな、とその時は思ってそのままになってしまいました。よくあるよね、なんでもすぐやらないと忘れます。

それが1年くらい前のこと。そして先月、松本の行きつけのお店の店長さんが、新しくできた木工作品のお店を教えてくれました。早速行ってみて器などを見ていると、なにやら素敵なショップカードが。いいお店に置いてあるショップカードは同じようにいいお店なことが多い。手に取ってみると、「金宇館」。ああ、そういえばこの金宇館、気になっていたんだった。と1年ぶりに思い出したというわけです。金宇館の家具を作ったのがこちらのお店、アトリエm4なのだそうです。

ちょうどそのころ、松本十帖というお宿に泊まってみたいという家族の希望があり調べていたのですが、とても人気のようで希望の日にちはすでに予約が埋まっていました。どうしたものかな、と思っていたところでの金宇館との再会。そのような一方的なご縁があり、それなら一度泊まってみようということになりました。

 

 

 

 

 

リノベーションしたばかりの気持ちのいい館内には、部分的に昔からのオリジナルパーツが大切に残されていました。このブログの一番最初の写真になっている玄関のガラス扉もそうで、レトロな雰囲気が素敵でした。玄関に近づくと奥から宿の方がにこやかに出迎えてくださり、ガラス戸を開けて招き入れてくださいました。車に忘れ物をして滞在中何度か玄関を出入りしましたが、その都度どなたかが目を配ってくださっているのがわかり、しみじみ日本の旅館の良さを感じました。

立体的な石組みと池のある庭園を眺めながら、ラウンジでチェックイン。石張りの床にレザーのソファとシックです。モダンな暖炉があり、冬は冬で心地いい空間なのだろうなあ。また来たい。こちらで出していただいた冷たい日本茶が柔らかくおいしかったため、夕ご飯への期待が高まりました。一事は万事ですからね。

ところでひとつ不思議に思っていることが。建具といいますか窓なのですが、木製の窓枠が雰囲気によく合ってとても素敵でした。が、ガラスが1枚なのです。現在一般的な住宅でさえ、そして温暖な東京でさえ二重ガラスか場合によってはトリプルガラスなんてこともあるのに、松本のガラスが1枚とは…!これはどういうカラクリなのだろう。寒くないのかな。

 

 

 

 

今回泊まったのは3階の「三城(さんじろ)」というお部屋で、写真は部屋の表札です。ひとつひとつがいちいち素敵なのです。この表札、以前松本にあった温石(おんじゃく)という料理屋さんの表札によく似ています。もしかして同じ人の作品かな、と思いつつ、自分たちの家を建てることになったらうちの表札もお願いしたいと図々しくも狙っています。

 

さて、お愉しみのお食事は、素晴らしいのひと言でした。私がいろいろ書くよりどうぞ写真から、創意工夫に溢れ且つ洗練されたそれぞれの味わいを想像してください。キャプションの料理の説明は覚えている範囲ですので正確ではありません、あしからず。

トマトとお酢のジュレととろろ昆布

いちじくと揚げたカリカリ

やわらかたこ煮、とうもろこし、もずくだっけ?、アスパラ牛肉、なす、絶品枝豆の山椒風味

アスパラのすり流し

馬刺し

頭からしっぽまでおいしい塩焼き

穴子とモチモチとトロトロ

信州牛と野菜、玉ねぎのソース

とうもろこしご飯とお味噌汁

御覧の皆さま、どうかよだれをお拭きください。

 

リノベーションしたばかりの素敵な建物、心を砕いたおいしいお食事、そして温泉。とても素晴らしい滞在となり一同大満足でした。しかしここで大切なことをひとつ申し加えておきます。金宇館のすばらしさはひとえに、働いている方々の気持ちの良さにあると感じました。到着したときに出迎えてくれた笑顔、やわらかく丁寧な物腰と、尋ねたことに対する回答はいつも正確であろうとする姿勢が見えました。出発のとき、若女将さんが外まで見送りに出てくださり、我々が充分離れたところでマスクを取ってお辞儀をしてくださいました。このご時世、どこでもマスクマスクと言われますが、必要のないところではマスクを取って礼儀を優先するという姿勢に感激しました。近頃忘れがちなこの感覚、きちんと考えたうえで実行していること、文字通り有難いこと、つまり稀有なことだと感じました。そしてその姿勢は学ばせていただかないと、と思いました。