今年の初ストーブは10/9でした。はやっ!信州移住後初めての冬だった去年は、雪も少なく気温も高く、なんと2月に雪ではなく雨が降ったりもしたのですよ。今年こそ信州の冬の洗礼を受けることになるのだろうか‥。ま、それも楽しみなんですけどね。

 

先月札幌に行ったのですが、行く先々のお店でどこから来たのかという話になり、長野県というと一様に珍しがられました。なんでも長野県からはあまり北海道に遊びに来ないのだとか。彼らの考察によると北海道と長野は気候が似ているから、長野の人はわざわざ旅行先に北海道を選ばないのではないか、とのこと。なるほど。確かに長野県には自然もあるしスキーもできるな。北海道名物のジンギスカンは実は発祥が長野だし、お蕎麦も長野、北海道は長野の真似をしているのですよ、と地元の方が冗談めかして言っていました。いや、だけど長野には北海道のような海がない!長野県民よ、そのために北海道に行くのだ。

 

あまり北海道に行かないと言われている長野県から札幌へは、信州まつもと空港から直行便がでています。これについても札幌の方々は一様に驚いていました。一度東京に出て羽田から来たのですか?と聞かれましたよ。あまりにもみんなが驚いてくれるので最後には聞かれてもいないのに、松本から直行便がでています!と宣伝してきました。

更に札幌の皆さんを驚かせたのが、時期によっては札幌市内にある丘珠空港への直行便も出ているということ。ご存知のとおり新千歳空港は札幌市内ではなく千歳市にあり、札幌へは車で小一時間くらいかかります。それが丘珠空港になると札幌市内なので20分くらい。これは近い。成田空港しか使えないと思っていたら羽田も使えた、みたいな感じではないでしょうか。

通年ではないにしても北海道だけで2路線あるくらいだから、信州まつもと空港はきっと日本各地へ直行便を飛ばす中堅空港なのだと思うでしょう。ところがどっこい、継続的に便があるのは新千歳と福岡だけ。あとは時期によって丘珠、神戸、伊丹があり、これらの5路線の組み合わせで1日に3便から5便が飛んでいます。このなかで北海道が2路線を占めているということは、長野県民は北海道にあまり来ないと言っていた道民の皆さん、実は信州まつもと空港は北海道推しですよ。

 

ところで信州まつもと空港は信州スカイパークという大きな公園に面しています。というか、地図を見ると信州スカイパークの一部に空港があるような感じ。だから土日ともなると家族連れなどで賑わっています。滑走路は1本しかないから、離陸したり着陸したりする飛行機は必然的に、さながら長いランウェイを行くモデルのように注目を集めます。離陸のための助走に入ると、滑走路に沿って見学しているギャラリーがみんな手を振り、中には飛行機に並走して走っている子どもの姿も。私が札幌に向かって出発したのはとてもよく晴れた日で、そんな様子を飛行機の小さい窓から見ながら、こんな長閑であたたかい空港があるのかとジンワリしました。

思えば大人になってからの空港といえば成田か羽田でした。大きな空港は滑走路が何本もあり、飛行機がひっきりなしに飛んだり降りたりしています。滑走路へ向かうにも複雑な順番待ちがあり、とてもシステマティックな場所。だけど思い返してみると、私の空港の原点は高松空港でした。当時はまだ「飛行場」って言っていたような気がします。父の実家が香川県で、まだ瀬戸大橋が渡っていないころ、東京からの里帰りはもっぱら飛行機で、だから高松空港はよく利用していたと思います。1日に数便しかないから、私たちが乗った飛行機が降りてくるのが地上で待っている祖父母にはよくわかったし、見送るときもどの飛行機か迷うことはありません。だから子どもの私は地上に向かって手を振ったし、自分が地上にいる立場のときは、自信をもって相手の乗っている飛行機に手を振ることができました。羽田みたいにたくさん飛んでいるとどれに乗っているのかわからなくて、いつのまにかそれが私の空港のスタンダードに塗り替えられてしまっていました。だから信州まつもと空港でみんながひとつの飛行機に手を振っているとき、小さいころの高松空港を思い出しました。

 

そんな感傷に浸りつつ、信州への郷土愛に目覚めた空の旅だったのですが、新千歳に近づくにつれ北海道の雄大な、広大な、見渡す限りの大地を空の上から目の当たりにして、一気に心奪われました。信州はそれはもう山が美しく、上空から見ても繊細な木々のグラデーションに飽きることはありません。だけど北海道はやっぱり全然違います、本州と。どちらかというとロシアのあたりと近いのではないでしょうか、行ったことないけど!本当に山がないのです。山がないのは関東平野で散々身に染みていますけれど、それとは違う次元で山がない。本当にまっ平なのです。川もあるけど、あんなに平らでどうやって流れるのだろうという感じ。そしてそこに絨毯を広げたように田んぼが広がっていました。信州の田んぼは山の斜面を利用した棚田や、川の流れに沿っていたり斜面の谷あいを縫うような不規則な形の田んぼが多いのですが、北海道の田んぼは一面です。一面。信州は立体だけど北海道は面。

今まで何度も北海道に行ったことがあるのに、上空から見る地形についてこんなに印象に残ったのは初めてのことです。信州に移住して1年、信州の自然を見慣れた目にとても新鮮だったのです。逆に考えると、東京に住んでいたころは北海道の自然と比較できる材料を自分の中に持っていなかったのだと思います。文化でも思想でも概念でも、それに気づくことのできる「目」を養っていきたいです。