名前から受ける印象から、雑貨屋さんかリラクゼーションサロンかな、と思いつつ、かれこれ半年以上気になっていたお店が、とても手の込んだランチのいただけるごはん屋さんだったのでご紹介します。以前、当日に電話をしたときはすでに一杯で入れなかったことがあるので、今回は前もって数日前に予約。行ってみるとその日も予約で満席だったので、ほとんど完全予約制みたいな感じになっているようです。

 

指北庵

 

築100年以上の立派な古民家。「古民家をおしゃれに改築した」古民家カフェではなくて、リアル古民家です。NHKの「古カフェ系ハルさんの休日」に紹介されたこともあるようです。風の通り抜ける軒下にはためく暖簾の清潔で涼やかなこと。暖簾をくぐると広い土間があり、置物や土偶などが並んでいました。八ヶ岳周辺では縄文時代の土偶が出土するみたいですね。土間から中に上がると、自分の親を思い出すような温かい雰囲気のご夫婦が、席へ案内してくださいました。

 

お料理はこちら。派手ではないけれどひとつひとつ手が込んでいて、存在感があります。箸置きが土偶!

四角いお皿に、きゅうりの酒かす和え、塩いかときゃべつの酢の物、きんぴらを凍み豆腐で巻いた肉巻き、花豆、クリームチーズコロッケ。塩いかや凍み豆腐、花豆など、この地方で昔から食べられてきた食材が使われています。右上の小鉢は夕顔の煮物。暑い日だったのでのど越しが心地よく、とろとろスルスルと食べてしまった。おつゆはそうめんとお豆腐で、なんと冷やしでした。こちらも熱の籠った体にうれしく、お代わりしたいくらい。使っているお豆腐は地元の千年豆腐で、陶仙房の味噌汁にも使われています。今度買いに行ってみようかな。お米は米沢吉田米。我が家でも食べている地元の農家さんのお米でした。左上のずんだは塩味。本当にちょっとも甘くないので不思議な食べ心地でした。

 

外と土間の間に掛けてあるこの暖簾がとても素敵で、目を奪われてしまいました。藍の濃淡に月をイメージさせるモチーフ。思わず吸い寄せられそうなほどの引力なのに、凛とした結界の役割をも果たしていると感じました。何事もなくくぐれてよかった。

指北庵の建物のまわりには小石を積み上げた積石がたくさんあり、そこにクモが糸を張っていました。それだけ見るとなんてことのないものですが、そこに注意書きがあり、曰く「クモの糸を払わないでください。クモの糸と石はバランスをとっているので、払うと石が崩れます」というようなことが書いてあります。そんなことがあるのだろうか。石を積むときにはもちろんクモの糸はないはずだから、ちょうどいい具合にクモが糸を張ることを見越して石を積んでいるということ?でもそうだとすると、仮に糸を払ったところで石は崩れたりしませんよね。不思議。ちょっと不思議なおいしいお店、ぜひ。