めっきり涼しくなりました。近所の田んぼでは、黄金色の稲穂が重そうに垂れ下がり、収穫のときを待っています。ちょうど1年前に引っ越してきた時も、このような豊かな風景に迎えられたことを懐かしく感じます。

「移住したくなる自治体」。本日のテーマは、移住してからちょうど1年の区切りだから、というわけではなく、先日北海道に行った際にちょっと思うところがあったので、考えをまとめてみたいと思ってのことです。

 

我が家はとにかく暑いのが苦手なので、信州が好きなのと同じくらい北海道も好きです。だから毎年マイルを貯めては遊びに行っています。滞在中は札幌メインで食い倒れ、たまに富良野や小樽などにちょっと遠出する、というのが毎回の過ごし方。今回はお世話になっている方から東川町というところがいいよと聞いていたので、行ってみることにしました。東川町は旭川市の隣で、富良野や美瑛とも近いところにあります。札幌からレンタカーを借りて2時間半くらいでした。

 

 

今回の東川町滞在は、町のブランディングと移住者支援について考えるきっかけになりました。まずブランディングですが、東川は「写真の町」「フォトジェニックな町」というコンセプトで広報しています。東川町国際写真フェスティバルというのを1984年からやっていて、35年かけて町のイメージを作り上げていることを考えるとかなり戦略的です。なんと東川の役場には、写真の町課、という課があるのですよ。その結果として今、若い人やお店をやる人が東川に憧れて、首都圏や札幌から移住しているのですから、随分と先を見据えた施策だなあと感心します。35年先のことを考えて運営している自治体なんて、そうそうないのではないでしょうか。すぐに結果を出すことが善とされている今の時代では特に。

翻って、必然的にわが茅野市のことを考えます。茅野市は風光明媚な八ヶ岳、霧ヶ峰などを有していて、ハード面では東川の大雪山に匹敵する資源があると思います。ソフト面ではどうか?東川の写真の町に対して、茅野市は縄文です。今年の10月に第1回八ヶ岳JOMONライフフェスティバルが開催される予定だったみたいですが、このご時世で延期になっています。残念。このような催しを始めることで、東川のように今後35年かそれ以上先の未来に、茅野市の魅力を残すことを期待しています。

しかしながら、縄文ってちょっと地味。「写真の町」や「フォトジェニックな町」は、キャッチフレーズとしてなんとなくおしゃれな感じだし、もともと東川町やよもや写真にさえ興味がなくても、なにかしらおしゃれなもの、新しいものを求めている層に届きそうな裾野の広さを感じます。「東川町を知っている」「行きつけのお店が東川」というのがステータスとなりうる、これこそブランド力と言うのでしょうか。だけど縄文って、縄文に興味があるひとにしか届かないのではないだろうか。35年後、どのような層の人たちにとって「魅力のある自治体」として存在していたいのか、が最も重要なことだと思います。

 

町のブランディングに伴ってもうひとつ考えたことは、移住者支援についてです。札幌からの移住者が東川でやっているレストランに行きました。そこには東川の食材の紹介が書かれたボードがあり、さらには移住してから様々な支援をしてくれている東川町への感謝の言葉がありました。もちろんお店の移住と個人の移住とは違いますし、支援といっても様々ですから一概に自治体の姿勢を比べるわけにはいきません。それにしても茅野市の移住支援の希薄さからすると、東川町うらやましい!ってなってしまいました。

茅野市は茅野市で、移住お試し住宅があったり移住セミナーがあったりと、移住者の誘致自体には積極的だと思います。だけどいざ移住してみると、その後のサポートは皆無!です。まあなにか助けてほしいわけでもないのでいいのですが。実際お試し住宅についてお問い合わせしたときに、移住した後の支援とかは特にありませんとはっきり言っていましたし。それにしてもなにか困ったことがあれば相談してくださいね、くらいは言ってくれてもよさそうなのにとは思いました。

 

信州に移住してもうすぐ1年というタイミングで、静かに盛り上がっている東川町に行けてよかったです。東川町のなにに惹かれて移住する人が多いのか、わかる気がします。大雪山や広大な農地などもともとある資源に加えて、どの方向を目指しているのか明確にしたうえで、その方向性に合う人たちが集まってきていると感じました。そのことがまた町を居心地のよいところにしているという好循環。風景、風土だけでなく、そこに積み上げていく生活、文化、人々の姿勢にまで統一感を感じます。そしてそれが町のブランディングなのかも、と思ったのです。

もし茅野市がこれからも移住者を増やしていくことを考えているのなら、東川に学ぶところは大きいと思います。ここの魅力は八ヶ岳などの山の風景、のどかな田んぼの風景、おいしい空気、水、夜空、静けさ、などたくさんあります。そしてこれらは以前の私を含め茅野や原村などに移住したい人にとってのハード面での魅力となっています。ではそのようなことに魅力を感じる層に向けて、ソフト面での魅力をどのように作るのか。縄文なら、縄文のなにが魅力となるのか。まさか土器が出土することそのものを魅力的と感じる人は少ないと思います。北欧のヒュッゲ、岩手のイーハトーブ、東川の写真の町。ハード面での魅力を強化する世界観の構築が必要だと感じます。例えば現在茅野市が立候補しているスーパーシティ構想。このあたりの自然や環境に魅力を感じている層にとっては、世界観がちぐはぐでちっとも魅力を感じません。むしろマイナスになり得るくらい。大切なのは一貫したブランディングで、独自の世界観の構築がその自治体の個性となり、住んでいること自体が住民の自慢になり、そしてそれがそのまま外へ向けたアピールになるのだと思います。

茅野市のハード面に魅力を感じて移住した層の私としては、グローバリズムが行き過ぎたこれからの時代、安全なお米、水、空気を主体とした、個人と個人がつながりあう小さなコミュニティの集合というのはいいと思います。そしてそれは根底で縄文文化につながっていて、過去と未来がらせん状になって循環する。いかがでしょうか、茅野市さん。