八ヶ岳の麓では、今ちょうど田んぼに水が張られ始めたところです。冬には雪で真っ白になった同じ風景が、今は緑と水に囲まれて生命力が溢れている!!夜はカエルの合唱がすごいです~!本日の話題とは全然関係ないのですが、今日は田んぼの写真がちょくちょく入ります笑

世界的に感染症が流行したことで自粛生活を余儀なくされ、世の中が止まってしまったような停滞感を感じている人も多いと思います。そんな中でも木々は芽吹き、水はぬるみ、着々と季節は進んでいました。人間の活動が発展しようが停滞しようが、季節の巡りにはなにも影響しないということがよくわかりました。カエルも蝶も山羊も桜も、いつもと変わらない春を迎えていることでしょう。いつもの春と違うと思っているのは、たぶん人間だけ。

 

 

いま話題の感染症で、多くの普通の人にとって問題となっているのはどのような点でしょうか?今となっては、感染そのものを恐れている人はそれほど多くないのではないかと考えます。もちろん高齢の方や持病のある方、またはそのような方に移してしまう可能性を考えると、感染症対策が必要なのは変わりありません。しかし今多くの人にとって差し迫って考慮すべき問題は、ウイルスそのものよりも経済不安ではないでしょうか。なかでも飲食店や小売店は自粛要請の矢表に立たされています。営業自粛、営業時間短縮、密を避けて満席にしない、など今までの経営計画と現状の辻褄が合いません、高い家賃を払っているのに。たくさんの人に来てほしい、との思いで出店を計画するのは当然のことだからです。

 

ところが最近立て続けに、たくさんの来店を期待しない営業形態のお店を見たのでご紹介したいというのが本日のテーマです。ひとつは、田舎へ田舎へと移転を続けているパン屋さん。もともとは横浜で、その後山梨、今は八ヶ岳です。それぞれの場所で評判となって人気店になるのですが、それに伴ってたくさん人が来るようになったので、徐々に人里から離れていったそうです。地方で人気のお店が都内出店、とかはよく聞く話ですけど、完全に逆の方向に移動している。お店なのに、人がたくさん来てしまうという理由で移転とはこれいかに。今はまだ八ヶ岳の里山にお店がありますが、いずれもっと山に入ってしまうのだろうと勝手ながら予測しています。

もうひとつ、都内の料理屋さんで働いたあと、縁もゆかりもない信州に移住して自分のお店を開いた人もいます。ここまではまあよくあるといえばよくある話ですが、なんとこのお店もまた、さらなる山奥を目指してただいま休業中なのです。新しいお店は美しい山の中らしいのですが、おいしいお料理と一緒にお酒も飲みたい私としては、まず交通事情を心配してしまいます。そしてその日はどこかに泊まるのだろうか、かといって山と言っている以上、近くにホテルとかはないだろうし。だけどそれでも来てくれる人が来てくれたらいい、というスタンスなのだと思います。料理だけでなく、店主の哲学や美学を提供する、そして価値観を共有する。そのような場になるのではないかと思います。

 

 

このようにたくさんの来店を期待しないお店は、当然薄利多売スタイルではありません。だけど料理そのものや世界観、店主の人柄、ホスピタリティーなど、お店での体験が金額に見合っていると判断すればお客さんはリピートします。そして周りに宣伝して応援します。丁寧に気持ちを込めて作られたものになら、相応の対価を支払いたいと思います。逆にそれを安値でたたき売りされてもちっとも嬉しくないかも。

ちょっと話がズレますけど、なんでも底値で買いたいという風潮はそろそろやめたほうがいいと思います。スーパーのチラシを見てすこしでも安いところで買うとか、家電量販店の他店より高い場合はお知らせください、とか。そういうのを喜んで利用する消費者がいるかぎり、企業もやめられません。そしてそれは経済の輪の中を巡り巡って、自らの収入にも影響するのですから怖いです。私は常々、買い物は投票だ、と肝に銘じています。何かを買うということは、そのお店や作り手を、お金という一票で応援すること。底値でなくても、一時的にお財布が寂しくなっても、応援したい、これからも続けてほしいと思うお店や商品を選ぶことにしています。私一人の購買力などたかが知れていますが、買うか買わないか、何を、どこで買うか、という意識的な消費活動が、消費者にできる意思表明だと考えます。

 

だれにでもいいからたくさんの人に売る、というビジネスモデルから、少数だけど価値を共有できる人に売るビジネスモデルへ。

どこでもいいから少しでも安いところで買う、という消費行動から、考え方やものの選び方、哲学に共感できる人から買うという消費行動へ。

どこで誰が作ったのかわからない大量生産品から、あの人が作るもの、へ。

すなわちグローバルからローカルへ。

そんな世界になったらいいな。

 

 

この美しい田んぼを見ていると、地元産のお米を買わない理由がわからない。お米も野菜も、できるかぎり地元産、信州産を選んでいます。これも投票。あ、田んぼの写真、関係ありましたね笑