移住することと、素敵な家を手に入れること。私のなかではほとんど同義語だったのだけど、最近少し考えが変わってきました。最終的にはどちらも手に入れるとしても、それは同時でなくてもよいのでは?そこで出てくるのが、移住して賃貸に住むという選択肢。

 

賃貸で移住

移住における賃貸のメリット

リスクの分散

自然豊かな信州に住むからには、広いお庭で家庭菜園やハーブガーデンを作ってみたい。そう思って土地や物件を探している人も多いはず。私たち家族もそうです。しかし思うような物件はそれなりのお値段がするし、そもそも移住ではなく普通の住宅購入でも、家は大きな買い物です。

家を買うときに、ほとんどの人は銀行からお金を借りてローンを組むと言われています。30年とか35年とかいう長い年月をかけてローンを返し続けるのだから、家を買うって本当に大変なこと。そんな人生の重大イベントと、移住というこれまた大きなイベントを、1度に迎えるのは果たして得策なのだろうか。

まずは賃貸で移住を済ませて落ち着いたころに、住宅購入という次のステップが見えてくる。そういうフローもあるのではないかと、最近考えるようになりました。

 

初期費用が安く済む

家は大きな買い物だという話には、実は2つの軸があると思う。支払い続ける莫大なローンがひとつ、もうひとつは初期費用。物件価格の2割と言われる頭金、1割と言われる諸費用。打ち合わせや建築中に現地に行くための交通費や宿泊費、そして引っ越し費用。ざっと見積もっても、数百万円の貯蓄が必要です。

一方でまずは賃貸に住むことにすると、初期費用は敷金礼金と引っ越し費用くらいのもの。数十万円で収まります。月々の家賃は現在東京で払っているより高くなることはまずないから、浮いたお金を貯蓄に回せる。それでも都会では考えられないような庭付き一戸建てや、うっかりすると畑付き一戸建てなんていう物件もあるかもしれない。ひとまず賃貸に移住して、貯蓄に励みつつ現地の生活に慣れたころ、ゆっくりと家を建てる算段を始めればよい。

 

現地でじっくり物件探しができる

現地に住むなかで土地勘が備わってくると、自分たちにとってのいい物件悪い物件の判断がしやすくなります。たとえば冬のあいだはわからないけど、春になったら農薬を散布する畑の隣の土地とか。夏になるとにおいが漂ってくる、牧場の風下とか。理想的な物件だと思っても、時期や見方によってはその表情を変えることがあるかもしれない。とりあえず移住して現地に身を置いていれば、それらに気づく確率は上がります。これという物件が出てきた時に、より多角的な視点からその物件を検証することができる。

さらには東京からネットで検索するだけでは辿りつけない、フレッシュでレアな情報を入手できる可能性もある。

 

建築中にいろいろ便利

理想の土地がみつかっていよいよ家を建てるというとき。近くに住んでいれば気軽に現地に行けるので、間取りや外構などの計画を立てるときにイメージしやすいというのは大きなメリットだと思います。窓から見えるであろう景色や、敷地内の植生など、細かい条件を加味したプランニングが可能になる。これから建つ家を想像しながら自分の土地に立つ時間は、どんなに楽しい時間になることでしょう。プランが決まって建築が始まっても、地鎮祭や上棟式など何度も現地に足を運ぶことになります。

そうでなくても、自分の家が建つ様子を見てみたい。昨日と比べて今日は、どこが変わったかな?プランニングで悩んだあの部材は、うまく収まっているかな?もともと家や建築が好きな私は、人生のなかでまたとない機会に、じっくりとその様子を見て味わいたいと思うのです。

 

なにかあったら戻ってこれる

移住したもののやっぱり都会に戻りたくなったときに、賃貸ならリセットが簡単。あまり考えたくないことだけど。見方を変えると、ひとまず賃貸で移住してみてから家を建てるかをどうか考える、というフローを辿ると、自分と地域のミスマッチ、あるいはそもそも田舎暮らしに向いていなかった、という失敗があった場合、少ないダメージで済みます。

 

移住における賃貸のデメリット

家賃がもったいない

初めから家を買ってローンを払い始める場合と比べて、移住先での家賃分が余計にかかることになります。ローンの支払いとして消化していく分が、家賃に消えていくのですから。ただし東京で高い家賃を払いながら頭金を貯めることと比べると、賃貸であってもひとまず移住してしまうという選択肢は、やはり残ると思う。

 

都会に比べて物件数が少ない

たしかに魅力的な賃貸物件は存在するけど、都会と比べると選択肢はとても少ないと感じます。こまめにネットをチェックしたり、現地の不動産屋さんに問い合わせたりして、チャンスを逃さないようにアンテナを張っておく必要があると思います。そうは言っても賃貸なので、いくらか気楽に構えることができる。もし物件探しに失敗して変なところに住むことになっても、現地でまた探せばいいのだから。