我が家の移住候補地である長野県原村・富士見町は、自然災害という視点から見たときに、どのような特徴を持つ地域なのだろうか。(ここでは土砂災害やがけ崩れといったピンポイントの災害は、同じ地域のなかでも危険度が異なるため除外します。)

 

長野県原村・富士見町で注意すべき自然災害

地震

避けたい自然災害として考えられるものの筆頭は、なんといっても地震。日本にいる限り、どこに住んでいても逃げられる相手ではないことは周知のとおり。西日本は比較的安全と言われていたけれど、阪神淡路大震災や熊本地震、鳥取県中部地震が起こってしまった以上、いまや安全とは言えない。

日本各地どこで起きても不思議ではない地震のなかでも、近い将来高い確率で起きるだろうと言われている大規模地震がいくつかあります。数十年も前から警戒され続けている「東海地震」、それをきっかけとして誘発されるかもしれない「南海トラフ巨大地震」、住宅密集地の火災や高層ビルでのエレベーター閉じ込めなど二次被害も怖い「首都直下地震」など。

そんな中で長野県原村・富士見町に移住するにあたって警戒したいのは、「糸魚川-静岡構造線断層帯」という活断層帯による内陸型の地震です。長野県は「日本の屋根」と言われるほど山が多く、それが魅力でもある。しかし山というのは、大地のシワ。裏を返せば、大地のエネルギーが集まり、プレッシャーが溜まっているところ。そのエネルギーが解放されたときに、地震となって大地を揺らします。

糸魚川-静岡構造線断層帯のルートは、長野県小谷村から南下して白馬村、安曇野市、松本市を通って岡谷市、諏訪市、茅野市、そして富士見町を通って山梨県へ。自治体の境界線の関係で原村は通っていないことになっているようだけど、この際大した違いではない。この糸魚川-静岡構造線断層帯における今後30年以内の地震発生確率は、最も高い区間でなんとまさかの‥!30%‥!地震の大きさはM7.6程度と予想されています。(データ:地震調査研究推進本部)この地震をきっかけとして、付近の火山の噴火が誘発される危険性もあるそうで、そうなるとちょっと想像力が及ばないほどの大災害になるのかもしれない‥。

 

火山

常時観測火山として噴火が警戒されている火山は、富士山、箱根山、浅間山など全国で50を数えます。八ヶ岳近辺には常時観測火山はないようだけど、北八ヶ岳の横岳(茅野市)は、日本に110ある活火山のうちのひとつに指定されているそうです。活火山とは「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」のこと。横岳は有史以来の火山活動の記録は残されていないものの、約800年前に噴出したと考えられる降下火砕物があるために活火山に選定されています。(データ:気象庁)それほど危険性は高くない火山とされているものの、前述の糸魚川-静岡構造線断層帯の地震に誘発されるかたちで噴火する危険性もないとは言えず、油断はできない。ちなみに原村・富士見町から20km弱のところにあります。

火山の噴火で怖いのは、大きな噴石、火砕流、融雪型泥流の3つとされています。火口から飛ばされて落ちてくる岩を噴石といって、人より大きなサイズの岩が飛んでくることもあるのだそう‥!直撃したらひとたまりもない。家や車なども潰されてしまうだろう。大きなものはその分重さもあるのであまり遠くまでは飛ばず、被害は火口から2~4kmの範囲に集中するそうです。となると、横岳から原村・富士見町までは届かないはず‥。届かないでくれ‥。

次に火砕流。これが一番怖いような気がする‥!なにしろ数100℃(場合によっては1,000℃になることもあるのだとか)の火山灰、水蒸気、空気のコンプレックスが、時速100kmの速さで地表を覆い尽くすそうです。お察しの通り、逃げることは不可能。遭遇したら最期ということ。

1991年の雲仙普賢岳の噴火では4.3km先まで火砕流が到達したと考えられている。また九州では過去に100km先まで火砕流が到達した事例もあるのだとか‥。100kmというのは、横岳から八王子までの区域が壊滅ということ。ここまで来ればもうお手上げ、諦めもつく。ちなみに横岳から原村・富士見町までは直線にしておよそ20km。位置関係を見ても直進はしてこないと思われるので、希望的観測ではセーフ。しかし念のため噴火の兆しがあったら、逃げた方がいいかもしれない。当然のことながら、火砕流を確認してから逃げたのでは遅すぎる。

もうひとつ怖いのが融雪型泥流。名前に「雪」がつくように、冬季限定だ。噴火の熱で雪が解かされ、土砂や岩を巻き込んで一気になだれ込む現象のこと。これも最大で100km先まで到達するというから恐ろしい。ただ速さは最大で時速60kmくらいと、前述の火砕流ほど高速ではない。

大きな噴石、火砕流、融雪型泥流ほどダイナミックな被害ではないものの、広範囲に及ぶという点で、小さな噴石や火山灰も侮れない。小石大やげんこつ大くらいの大きさの噴石でも、当たりどころによっては大惨事になる。さらにそれが10kmくらい先まで風に乗って飛んでいくというのだから油断できない。火山灰にいたっては数10kmから数100km先まで飛んでいくことがあるらしく、原村・富士見町にも当然届くと思われる。火口付近では50cm以上積もることもあり、木造の建物はその重さで倒壊してしまうかもしれない。火山灰というのはフワフワとしてあまり害がなさそうに見えるけど、実はガラス片のように鋭くとがった形をしているので、目や呼吸器に入ったら大変だそうです。

 

洪水

長野県では市町村ごとに「洪水ハザードマップ」を公開しています。しかし原村・富士見町は「洪水ハザードマップ作成対象外市町村」。(データ:Web site 信州)ハザードマップを作るほど警戒しなくても大丈夫ということなのだろうか‥?原村の過去の災害記録によると、昭和30年代に2回、弓振川が氾濫したとある。行方不明者も出しているようだけど、「氾濫」という記述は以降見られません。(データ:原村資料)

台風

台風の季節になるとネット上でひそかに話題になっていることがあるらしい。どうやら長野県には台風が来ないらしいのです。台風はだいたい西か南からやってくるのだけど、長野県では「飛騨山脈」、「木曽山脈」、「赤石山脈」が鉄壁の守りとして鎮座している。台風が来ないというより、高い山脈によってさえぎられると言われています。

 

首都直下地震やテロとの遭遇など、東京に住むことで高まるリスクは確かに存在します。しかし私たちが移住する理由に、「安全な土地を求めて」という発想はない。忙しい東京を卒業し、自然に寄り添って静かに暮らしたい、というのが移住理由の全てです。そうは言ってもできることなら、自然災害のリスクが少ない土地を選びたいという思いも否定できない。