移住する理由は人それぞれ。完全に移住するにしても、二拠点居住にしても、移住を希望する多くの人にとって一番問題になるのは、仕事のことではないかと思う。

 

移住先での働き方

統計局のデータによると、日本の就業者数6,495万人のうち、被雇用者は5,793万人(2016年10月)。つまり日本で働いている人のうち、じつに約89%は会社や国に雇用され、賃金というかたちで収入を得ているということです。つまり新卒や転職で「仕事を探す」ことは、「雇用主を探す」こととほぼ同義。雇用主から安定して賃金が支払われる代わりに、雇用主の手となり足となり働かなければならない。移住などという個人の自由な選択との両立は、残念ながら難しいと思われてきました。

しかし最近では、いろいろな働き方がある、ということが認められつつあるように感じます。移住の夢を叶えるためには、どのような選択肢があるだろうか。

 

転職

移住セミナーや移住ブログを見ていると、勤めている会社を辞めて、新たに移住先で仕事をみつける人が多いようです。都会ほどの選択肢はないにしても、地場産業や昔からある製造業などで栄えている地域はねらい目。地方に工場や支店、場合によっては本社がある大手企業もあります。地方は基本的に車社会なので、地獄の通勤電車は卒業できる公算が高い。その点では、快適なサラリーマンライフが待っている可能性はある。

移住前と比べて収入が減る覚悟は必要と言われているけど、すでに移住した人の話によると、結果的にそこはたいして重要ではなかった、ということをよく聞きます。というのも移住前とは生活のプライオリティが変わったので、あまりお金を使わなくなったのだとか。あれこれと消費したり、娯楽を享受したりといった欲求がなくなり、生活そのものを楽しめるようになったのだそう。それこそ、目指すところ。

 

就農

転職と並んでメジャーな選択肢が、就農。むしろ農業がしたいから移住する、という移住の動機になっているパターンもあるほど。まったくの素人から始める人がほとんどなので、行政でもいろいろな支援をしてくれるようです。はじめは地元の農家に弟子入りして学び、特定のカリキュラムを終えたら晴れて農家デビューするという手厚いプログラムも。比較的若い世代が、無農薬や有機栽培で安心安全にこだわった野菜やお米を育てたい、というケースが増えているそう。

自然相手の仕事なので、特に初めのうちは収入が不安定になりがちだけど、今は農家も差別化の時代。インターネットを使って都会のマーケットを開拓し、「こだわり農家」としての付加価値を生んでいる農家もあります。

また農業に限らずオーガニックや環境問題など、同じ価値観や問題意識を持つ人たちがつながり、ワークショップやイベントなどに派生することもあるかもしれない。そのようにしてできたグループで、農業と並行して社会活動や経済活動を始めるパターンもあるようです。

 

起業

「起業」と聞くとちょっとハードルが高いように感じます。「移住してペンションを始める」と聞くとイメージしやすいかもしれない。ほかにも天然酵母のパン屋さんを始める、こだわりのコーヒーを出すカフェを始める、ヨガ教室を開くなど。得意なことを活かして自立するなんて、考えただけでワクワクする。あるいは今までの経験を活かして、フリーライターになる、フリーのフォトグラファーになる、陶芸家になる、ガーデナーになる、なども楽しそう。

ただしすぐに成功するとは限らないので、計画・資金ともに綿密な準備が必要。勤め人にならない限り、就農にしても起業にしても、「自分で自分を賄っていく」という点では同じ。それに今の時代、会社に勤めたところで将来を保証してくれるわけでもない。

 

今までの仕事を続ける

この選択肢がある人はラッキーだ。例えば、勤めている企業の支社や支店が移住先にあり、転勤希望が叶う場合。テレワークなどで自宅勤務が認められている場合。看護師や保育士などで移住先でも募集がある場合。あるいはすでに起業していたりフリーランスだったりして、住む場所を選ばない場合など。

先日お話を聞いた先輩移住者は、週のうち半分は東京にある今までの勤め先で働き、残り半分は移住先で様々な活動をしているのだとか。彼のように半分でも収入が保証されていれば、残りの半分で農業なり起業なり、チャレンジがしやすくなる。

最後に、我が家の目論みを発表。我が家の場合、夫の仕事は場所を選ばない。なので4の「今までの仕事を続ける」なのだけど、問題は妻。現在週3~4くらいで働いているのだけど、移住先でもまた同じような仕事を探すのか。いいえ、できれば誰かに雇われるのではなく、好きなことをして収入を得たいのです。でも虫が苦手だし、農業に興味はない。つまり3の「起業」。粛々と準備を進め、移住する頃には軌道に乗っているのがベストだとは思う。が、早く移住したいので、現実には移住と起業は同時になるかなあ。