東京暮らしか田舎暮らしか。完全に拠点を移してゼロスタートというのは、少し無理があるような気がしています。そこで第3の選択肢。「移住しつつ東京にも拠点を持つ」というのはどうだろう。

 

信州と東京の二拠点居住

私たちは現在都内に住んでいるのだけど、信州を中心に移住候補地をさがしています。自然の豊かな場所で人間らしい暮らしをしたいということと、東京の人の多さや夏の暑さに、いい加減耐えられない、ということが主な理由です。旅行で行く軽井沢で感じる木々の甘い香りや、土のひんやりした踏み心地、永遠に深呼吸を続けていたいと思うようなすがすがしい空気、暗くて静かな夜などに魅了され、住むなら信州がいいと思うようになりました。

しかし親や友人はみんな東京周辺にいるし、夫は勤め人ではないにしても、東京抜きでのビジネスは考えられない。そこで登場するのが、第3の選択肢としての「移住しつつ東京にも拠点を持つ」。つまり移住したあとも、東京の拠点はそのまま残しておくという選択です。

我が家の理想的なスタイルは次のとおり。まず基本的に、ひと月のほとんどは移住先で、自然のリズムを感じながら生活したい。だってそのための移住なのです。もともと自宅で仕事をしている夫は、今までどおりの仕事を続けることができます。簡単な打ち合わせなどは、チャットでもスカイプでもメールでも電話でも、どうにでもなる有り難い時代。静かな環境は、むしろ今より仕事がはかどるかもしれない。重要な打ち合わせや、実際に会った方がスムーズだと思われる場合は、東京に行く。月に1~2回行けば済むように予定をまとめる工夫が必要かもしれないけど、それほど難しいことではない。その時に必要となるのが、東京の拠点です。

理想を言えば、今住んでいる自宅兼オフィスになるようなマンションを、そのまま維持できれば完璧。信州-東京間を月に何度も日帰り往復するよりも、1回あたり2~3泊して複数の用事をこなし、移動の回数を減らす方が合理的です。極端な話、月のうち1週間は東京にまるまる滞在して用事をこなし、残りは信州の自宅で過ごすというのでもいい。しかし残念ながら、2つの家を維持するほど我が家の経済力は今のところない。

そうは言っても東京に拠点は必要だ、ということで。まだ誰の了解も得ていないのだけど、ひとまず二拠点居住を始めるために考えられる解決策を挙げてみます。

東京での滞在先として、少し遠いけど千葉にある私の実家に泊まらせてもらう。代わりに移住先に遊びに来たときは、精一杯もてなす。夜遅くなるなど場合によっては都内のホテルも使う。

打ち合わせは、基本先方の事務所に出向く。ランチミーティングやカフェミーティングもあり。

PC作業は、都内にある夫の親の事務所を貸してもらう。代わりに移住先に遊びに来たときは、精一杯もてなす。もしくは仕事仲間とオフィスをシェアし、いつでも立ち寄れるようにしておく。

いつの日かは、東京にも自宅兼オフィスを持てるようにがんばりたいものだけど、無ければ無いでなんとかなりそう?

 

テレワーク

ネットワークが発達したいま、企業に勤めている人のあいだでも、週のうち何日かは自宅で働く「テレワーク」という働き方が出てきているようです。会社に行くのは週1~3日くらい。となると二拠点居住は十分可能。我が家のように東京での拠点を作る必要もなく(会社があるからね。泊まるところは必要になるかもしれないけど)、うまくいけば定期代わりに交通費の補助もあるかもしれない。企業としても優秀な人材を失うことなく、個人の生き方の自由な選択を受け入れることが可能になる。そしてそれはそのまま、企業価値の向上にもつながるのだと思う。

一方で過疎に悩む地方は、豊かな自然が魅力的だということで移り住む若い層が増え、まさに需要と供給がマッチ。さらにそれが実家のある田舎へのUターンだと、おじいちゃんおばあちゃんもハッピーに。

もちろん東京が大好きで、都会の刺激がたまらない!という人はそのままでいいのです。都会に疲れてしまったのに、仕事の都合でどうにもならなかった人たちにとっては、二拠点居住で選択肢が広がるのではないでしょうか。

あるいは反対に、地方に住んでいるけど都会でいっちょ挑戦してみたいという人などは、軸足を住み慣れた地元に残しつつ、じわじわと都会へと攻めることができるのかもしれない。

経済的な壁、物理的な壁など、超えるべき壁はいくつかあるのは確か。それでも少なくとも私たちは試してみたいと思うのです。